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2026年8月 和ロウソクはつなぐ

和ロウソクで照らされた空間では光も影もゆらめく。「和ロウソクはつなぐ」(大西暢夫著、アリス館)には和ロウソクがどのように出来ているかが説明されている。 それによると、和ロウソクの芯は和紙を筒状に巻いたものの上に灯芯というものを巻き付け、灯芯がはずれないように真綿をからめて作られる。和紙はコウゾ、ミツマタ、ガンピなどの植物の皮を蒸して剥がし、釜でゆでた後冷たい川の水でさらしてあく抜きをしてから機械でほぐした繊維を水の中ですいて作る。灯芯はい草の仲間の灯芯草という植物の髄。墨を作る時に使う煤も灯芯草を燃やして作る。真綿は蚕蛾の繭を茹でて繊維を広げることで取り出す。この芯の上にハゼの木の実をしぼった蠟を年輪のように塗り重ねて和ロウソクは作られる、とのことだ。

読売新聞2021年7月31日東京版に「文化財修理 原材料足りず」という記事が載っている。国内の絵画、仏像、古文書などの文化財を修理するための原材料確保や人材育成が難しくなっている現状を紹介した記事だ。その中に「文化財修理のために必要な主な入手困難な用具・原材料」のリストが載っていて25品目があげられている。その中にコウゾ、雁皮紙、真綿も含まれている。和ロウソクは伝統工芸品だが、文化財と同様に原材料の調達が難しくなっている。この新聞記事は文化庁が「匠プロジェクト」と名付けた事業を翌年度から始め修理体制の強化に乗り出すことにした、という明るいニュースを載せている。それから5年経ち、良い方向に事業は進んでいることを期待する。

「和ロウソクはつなぐ」には和ロウソクに塗る蠟をしぼったあとのハゼのしぼりカスの蠟カスが、藍染め職人の手に渡り、藍を発酵させる甕と甕の間でゆっくりと燃やし藍の発酵を助けるといった、物のネットワークが生き生きと描かれている。すぐれた質感を持つ色々なものを生み出す伝統工芸の土壌には、このようなネットワークがあるのだと知った。(執筆者:小松英彦, 2026/08/04)

2016年11月 保田道世さんを知っていますか?

"You may not have heard of Michiyo Yasuda, but you know her work." という気になるタイトルの記事がBBC newsbeatで先月12日(2016年10月12日)に大きく報じられました。
https://www.bbc.co.uk/newsbeat/article/37629894
保田さんが10月5日に亡くなったことを伝えると共に、彼女の仕事を偲ぶ内容でした。保田道世さんはスタジオジブリが生み出した数多くの名作の色彩設計を手掛けてきた女性です。BBC以外にも世界をこのニュースが駆け巡っています。kotaku.comでは、保田さんが手がけたさまざまな「色」の世界を見ることができます。
https://kotaku.com/studio-ghibli-color-designer-michiyo-yasuda-has-died-1787696219
保田さんについて書かれた「アニメーションの色職人」(徳間書店)を読むと、色彩設計という作業の目的が、実は質感の表現であったことが分かります。世界のさまざまな物が持つ質感を、画面を通していかに見る人に伝えるか、に取り組まれた保田さん。質感の理解を通して豊かな世界の根源に迫ろうと試みている研究者の仕事と、深いところでつながっていることを感じます。
(執筆者:小松英彦, 2016-11-9)

2016年5月 網膜の桿体細胞が色覚に関係することを示す報告が出ています。

マウスではUVに感度の高い錐体と、緑光に感度の高い錐体の2種類と、桿体の3種類の光受容細胞が存在しますが、このうち桿体とUV錐体の相互作用によって反対色応答(波長によって極性が変化する応答)が生み出されているようです。著者らは同じメカニズムがヒトの薄明視で起きる色知覚の変化(プルキンエシフト)の仕組みにも関係することを考察しています。(2016-5-23)

Joesch M and Meister M. A neuronal circuit for colour vision based on rod-cone opponency. Nature. 2016 Apr 14;532(7598):236-9. doi: 10.1038/nature17158. Epub 2016 Apr 6.

2015年12月 工芸作家と工学研究者の共同作業で新たな質感表現が生み出されています

2015年5月 Fraunhofer研究所

ドイツのダルムシュタットにあるFraunhofer研究所は3Dプリンティングに特化した研究所です。そこでは、3Dプリンタそのものの開発の他に、質感再現 (appearance reproduction) についても精力的に研究しています。現在の最大の関心事は表面下散乱に関連する複雑な見えの再現で、次世代あるいはその次の世代の3Dプリンタにこの研究成果が搭載される可能性があります。

2015年2月 去年視覚研究者を驚かせた青黒-白金ドレスの違うバージョンが登場しました。

これも照明の推定の個人差を表すのかも知れません。

オリジナルの青黒-白金ドレス問題についてはいくつか論文が出ています。例えば
Gegenfurtner KR, Bloj M, Toscani M. The many colours of 'the dress'.
Curr Biol. 2015 Jun 29;25(13):R543-4. doi: 10.1016/j.cub.2015.04.043. Epub 2015 May 14.
Lafer-Sousa R, Hermann KL, Conway BR. Striking individual differences in color perception uncovered by 'the dress' photograph.
Curr Biol. 2015 Jun 29;25(13):R545-6. doi: 10.1016/j.cub.2015.04.053. Epub 2015 May 14.
など。(執筆者:小松英彦)

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